2014年02月08日

とあるスパイ小説のあらすじ

正義てのはなにを基準にしていうんだい?
罪とはなんだべ? それを裁くのはいったいどこの誰ならええ?
--天外伺朗「奇子」--

J国で革新政権が樹立した際、急務となったのが外交ルートの構築である。これは外務省を通したルートではなく、事前交渉などを行うための非公式ルートである。野党としての時期が長い革新政党にとって、要職に就いている議員も海外との人脈があるわけではなく、外部よりコネクションを持つ人間を集める事となった。場合によっては相手国が推薦する人間を候補とするケースがあった。

その際に隣国K国とコネクションを持つ人物として挙がったのがSである。SはK国関係者からの信頼も厚く、直ちに内閣府職員として登用され、K国との情報交換、非公式交渉の担当となった。

その後、革新政権は1期で国民の信任を失い、保守政権が返り咲くこととなる。保守政権がまず最初に行ったのは革新政権時代の政治団体や海外諜報機関との関係を洗い出すことであった。その中でSはK国側が用意した諜報員であり、取引材料として用意していた以外の機密情報についてK国側に流していたことが判明する。政府はSを海外留学を理由に国外追放し、当面機密情報に触れにくい環境に置くことにした。

革新政権末期が始まりであるが、保守政権になってからもJ国とK国との関係は、K国が外交的な攻撃を行う形で悪化していく一方であった。J国としては何らかの反撃が必要であるが、K国とはそれなりに民間レベルでの交流があり、またマスコミもK国に好意的な中でJ国が取れる手段は非常に限られていた。

そこで、両国の「政府関係者」と「一般人」でまったく逆の構図に見える事件が発生する。

留学中のSに公務でK国内で行われる会合に出席するようにとの指示が下る。公務パスポートを用い、現地での宿泊先は現地大使館が手配、そして空港への出迎えつきという条件での出張である。Sは予定通りK国の空港に到着し、現地大使館のスタッフの車に乗り空港を出る。

そのから数日間、会合が行われるK国首都、そしてJ国に最も近い港湾都市でSの姿が何度か目撃される。旅館で宿泊の手配を行ったり、海に出るためのゴムボートや船外機を買い求める姿であるが、いずれもマスクとサングラスで顔を隠し、外国人を自称し明らかな偽名を使い、どちらかと言えば不審者として印象に残る行動であった。

数日後、J国の海上警察に「遺体を載せたボートが漂流している」との通報があり、海上警察は通報にあったものと思われる遺体を発見する。通報者はレジャーボートを操縦していた民間人だったため、海運関係者や漁業関係者の場合と異なり、その後連絡をとることはできなかった。

海上警察の行った遺体の検分であるが、偶然にも非公開捜査扱いで失踪届が出ていた内閣府関係者Sが合致する。非公開捜査のため海上警察は官庁経由で政府に報告、通常であればこの事件は内々に処理されるはずであった。

革新政党の支持者が多いマスコミは、保守政権の失策を探していた。特に先日制定された「特定機密法」に関連する話題があれば、いくらでも保守政権を叩く方向に世論を誘導できる予定であった。そんな中で政府関係者から興味深い情報がもたらされる。「内閣府関係者で出張中に不審死した者がいる」と。そしてその後ろにこのような文句が付けられていた。「この事件は特定機密に該当し、闇に葬られる可能性がある」

マスコミは躊躇なくこのリーク情報をニュースとして報道を開始する。表に出ている情報をつなげて見た「一般人」の目にはこの事件はこう読み取れた。

「J国の政府関係者が、関係の悪化しているK国に殺害された」

驚いたのはK国の「政府関係者」である。なにせ報道されている内容と全く逆の事態が発生しているのだ。慌てて捜査機関を動かすが既に集まるのは欺瞞情報だけで真相につながる情報は全く手に入らない。K国は焦った。なにせSはS一人ではないのだから…(おしまい)

posted by たわらった at 15:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 業務連絡 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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